解体した元の母屋から大切に引き継いだ素材を、新築建物の中に自然に宿すことで、家族の歴史と日常をつなげることを設計で目指しました。
床柱、お仏壇の4枚戸、そして扇状のデザインが配された障子──
それらを“遺すだけ”ではなく、新たにつくる住まいの一部として丁寧に配置し、時間を重ねた木の表情と共に暮らしを刻んでいける場所としています。
リビングは斜めに持ち上げた天井を採用し、その天井の中で梁を現しとしました。
木の構造がそのまま空間のデザインとして機能し、素材感が穏やかな質感をつくります。
リビングをつろぎの場としてのみではなく、家族の趣味や時間を豊かにするハンモックなどをかけられる場としても構成。
ゆらりと揺れるハンモックが、木の梁や天井高のあるリビングに軽やかな動きを添え、家族の楽しめる場が生まれます。
伝統を受け継ぎながら、住まいは今の暮らしに向けて刷新する。
この両立を丁寧に構築したことで、ひとつの家の中に「過去」「現在」「未来」が同居する感覚が生まれました。
家族の歴史は、素材として、空間として、そして日々の時間として、ここからまた紡がれていきます。